Toscanini – Beethoven/Mozart / amazon MP3

2枚セットの本CD、目玉はベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』。嬉しいことに、同じくベートーヴェンの交響曲第7番、モーツァルトの交響曲第35番『ハフナー』、ケルビーニの『アナクレオン』序曲が収録されている。オーケストラは全てBBC交響楽団。ロンドンのクイーンズ・ホールのライヴであるが、全てBBC放送の公式のソースによるもので、録音が非常によいのが魅力。もちろん、1930年代のものなので今日の最新録音とは比較することすらできないが、年代を考えるとちょっと驚くぐらい聴きやすく、アンサンブルを始め、演奏の内容も十分堪能できるもの。
しかしながら、もっと驚くべきは、演奏内容。トスカニーニというとスタンダードなものとして思い浮かべられるNBC交響楽団の演奏が、トスカニーニの真価を表すものであるとは言えない、ということを痛感させるほどのもの。もちろん、解釈上の成熟といったこともあるわけであるが、このCDではっきりと聴くことができる、しなやかでみずみずしい演奏を耳にすると、やはりトスカニーニほどの指揮者であっても、歳と共に失うものがいかに多いのかということを思わずにはいられない。
BBC交響楽団は、素晴らしい集中力で見事なアンサンブル。ヴィルトゥオーゾ揃いのNBC交響楽団のような華麗さはないが、アンサンブルとして良く落ち着いたしっとりとした魅力に溢れ、決して見劣りするものではない。『ミサ・ソレムニス』はソリストも豪華、コーラスも水準以上。難しいことで有名な『ベネディクトゥス』のヴァイオリン・ソロ(ポール・ビアードと名前がクレジットされている!)が見事な演奏を聴かせてくれる。
モーツアルトの『ハフナー』、ケルビーニの『アナクレオン』序曲もかなりの名演であるが、特筆するべきはベートーヴェンの第7番。名演揃いのトスカニーニの録音の中でも、トップクラスの名演です。
本CD、トスカニーニの好きでない人でも十二分に楽しめるお薦めです!
(Written by 黒口隊長)